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月刊・京の舞妓さん 10月号【1】/2012年 - 舞妓倶楽部
10月の花街は、祇園甲部の温習会を皮切りに、上七軒の寿会、宮川町のみづゑ会、そして先斗町の 水明会…と、“秋のおどり”のラッシュが続きました。そう、今月は芸舞妓さんにとって、一年の中で 最も多忙な時期のひとつ。それにもかかわらず京都各地で行...
Updated Date : 2017-09-14 15:53:02
Author ✎ maikoclub
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祝!新しい舞妓さんと芸妓さんのお披露目 ~『お店だし』と『襟かえ』~ 
10月の花街は、祇園甲部の温習会を皮切りに、上七軒の寿会、宮川町のみづゑ会、そして先斗町の 水明会…と、“秋のおどり”のラッシュが続きました。そう、今月は芸舞妓さんにとって、一年の中で 最も多忙な時期のひとつ。それにもかかわらず京都各地で行われた催事でも、彼女たちの艶やかな姿 を度々お見かけする機会が!
毎年恒例となった『二条城お城まつり』のオープニングイベントでは、今年も祗園甲部の舞妓さんたちが勢ぞろい。紗月さん、佳つ智さん、真咲さん、豆六さんらが、来城者の方たちをお出迎えされました。北野天満宮の『ずいき祭』では、上七軒の芸舞妓さんがお茶屋前にずらりと立ち並び、街を練り歩くお神輿を見送るというなんとも綺羅びやかなお姿が…。 そして、忘れてはならないのが、平安神宮の『時代祭』。清少納言や紫式部、小野小町、常盤御前など、豪華絢爛な衣装を身にまとい、歴史に残る才女たちをみごとに再現した『平安時代婦人列』。中でも、注目の巴御前、今年は先斗町芸妓の久加代(ひさかよ)さんが務められました。女武将の凛々しさといったら、もう。勇ましいのに、それでいて妖艶な、なんとも不思議な魅力を放っておられました。
こうしてみると、秋の京都はおどりと祭一色!賑やかに活気溢れる、なんともお目出度いシーズン真 っ盛りなのですが、花街ではさらに輪をかけるように、嬉しい慶びごとがあったのです! 花街のひとつ、上七軒では約2年振りとなる「お店だし」こと、新しい舞妓さんがデビューされました。彼女の名前は梅ちえさん。【月刊京の舞妓さん 9月号】でも“見習いさん”期間中のおこぼいお姿をご紹介しましたが、10月2日をもって、正式に舞妓さんとなられました。
梅ちえさんが屋形の『梅乃』に“仕込みさん”として入られたのは、今年の1月5日。その前の年、 まだ現役の高校生だった16歳の梅ちえさんはお父様と共に、はるばる神奈川県横浜市から面接 を受けに来られました。 女将さんいわく、「ぱっと見て、かしこそうな娘やと思いましたね」。日本全国から舞妓さん 志願者が続々と訪れる今日の花街。しかし、素質がないとみなされれば、その敷居は決してま たぐことができないシビアな世界…。 幸運にも、第一関門をさらりと突破した梅ちえさんですが、舞妓修業の道は計り知れず。聞けば聞くほど、驚くばかりの内容でした。 「一緒に暮らすということは、寝てる時以外はずっと一緒におることと同じですやん?私はあの娘に、“何でも、目で見て覚えなさい、耳で聞いて覚えなさい”っていうんです。うち(屋形)は学校 とちゃいますから、“はい、今日はお行儀の時間”っていうのは全くあらしまへんしね。毎日の生活を しもって、覚えていきなさいっていうことです。そのために、寝泊まりするんですから、そこの家に 入り込んでね」 「それでもね、最初はまず、ちゃんと正座することからはじめますわ」と続けて、女将さんは言います。「私らと話する時も正座せなあきませんし、お座敷で足投げ出すなんかできまへんやろ?あの娘はそれほど問題ありまへんでしたけど、やっぱし、関東の出やから言葉がちょっと難儀でしたわ」
耳にするだけでも癒されるあのはんなりとした独特の花街言葉。 “いつもすんまへん。おおきに” (いつもありがとうございます)。“おかあさんによろしゅういうといとおくれやっしゃ” (女将さんに宜しくお伝えください)。“先生、水曜日は、検番(お稽古場)においやすか?”(先生、水曜日は、検番にいらっしゃいますか?)…。 聞く側としては「舞妓さんの話し方って、本当に素敵だよなぁ…」と心ゆくまで陶酔したい気持ちにもなります。しかし、学ぶとなると、さあ大変。梅ちえさんご自身も修業時代を振り返って、「ここは最初、ほんまに、異国どしたね…」というように、花街言葉は外国語といってもいいくらい、私たちが日常的に使っている日本語とはかってが違います。 しかも、教科書のようなものがあるわけでもなく、全て日々の生活の中でひとつずつ習得していくのですから、並大抵のことではありません。それでも、舞妓さんであるかぎり花街言葉がきちんと話せることは必須であるゆえ、「喋ってて、ちょっとでもおかしかったらすぐ直します」-女将さんはぴしゃりと言い切ります。 「やっぱし、きびしするんがええんですよ。中途半端に甘くしとくと、あの娘のためになりませんしね。外行った時に恥かきますから。言葉づかいでも、たとえば、物の考え方ひとつでも、舞妓さんとしてのあの娘やなしに、ひとりの女の子としてもね。まあ、毎日、ようがんばってはりますわ」 梅ちえさんの場合、舞のお稽古は、住み込みスタートとほぼ同時にはじめられたのだそう。お座敷ではお食事やお酒を運んだりして、お姉さんたちのお手伝いをしながら、現場で流儀を身に付けてこられました。その合間を縫って、屋形のお使い、掃除・洗濯など日常的なこともこなす毎日を積み重ねてこられて、9ヶ月間。そして、晴れて今日に至るわけですが…。 「修業中、“もう辛い!辞めたい!”と思ったことはありますか?」-尋ねると、透きとおるような声で「それはおへんどす」と即答されました。柔和な面持ちとはうらはらに、芯の強さを感じる言葉にどきり。当初は親御さんもこの道に入ることを反対されていたそうですが、小さい頃からの憧れだった『舞妓さんになる』というただひとつの夢が梅ちえさんを突き動かしたのです。その裏には、“自分を磨きたい!”という強い気持ちがあったといいます。 「今までの自分がだらしないといったらあれどすけど、いい加減な自分がいややなと思っていて…。舞妓さんってすごいきびしい世界どす。でも、高校は1年通って辞めて、ここに飛び込んできたんどす」
そうして迎えたお店だしの日。「舞妓がひとり出るいうことは、大きいことどすからね。街をあげてのことどすから」とお姉さん舞妓さんがいうように、屋形にとってもまたたいへん重大な出来事であります。
極上の正装とされる黒紋付に、こがね色に輝くだらりの帯を締め、足元はもちろん、あの“おこぼ”。割れしのぶに結われた髷には、銀のビラカン、珊瑚の珠が付いた玉カン。さらに、赤い鹿の子、鹿の子留めを刺し、今や稀少となったべっ甲の飾りが豪華にあしらわれていて、その姿はまばゆいばかり。実はこれら全てを用意するのが、屋形なのです。 真珠、瑪瑙(めのう)、ダイヤモンドなどで豪華に装飾されたポッチリ(帯留め)だけでも、ひとつ数十万~数百万するといわれていますから、その総額たるや、きっと想像を絶するものであるはずです。花街や屋形によってもそれぞれに異なるとは聞きますが、舞妓さんひとりを育て上げるのに掛かる費用で、家一軒が建つといわれるほど…。 これだけ高価なものを全身に纏うことによって、舞妓さんの中にさらなる覚悟が芽生えるのは当然のこと。“仕込みさん”時代から、“見習いさん”を経て、お店だしするまでに掛かった衣装代や髪結い代、お稽古代、生活費など、屋形が面倒をみてくれる一切のお金は、最終目標=「芸妓さんになること」の修業期間にあたる舞妓さん時代に、プロとしての自分を磨き上げつつ、働くことでお返ししていくのです。 梅ちえさんには、デビュー直前、“見習いさん”として上がったお座敷でちょっとした苦い思い出があるそうです。「仕込み時代は浴衣か着物を着るんどすけど、その感覚のまま、お客さんの前で“祗園小唄”を舞ってもうたら、お引きずりが足に引っかかってもうて…。あきまへんでしたわ」 お引きずりとは、舞妓さんのトレードマークであるあの長い裾を引くお着物のこと。肩をすくめていかにも申し訳なさそうにされていたのですが、女将さんいわく、「みーんなそうですわ。はじめは誰でも蹴つまずきそうになります」。 見習いさんとしていくつものお座敷をまわり、お披露目する間にも、お客さんからは「梅ちえちゃんは、ほんま可愛らしいし、人気が出るやろね」と方々から声が挙がっていたといいます。現在、上七軒では8人目となる新米舞妓の梅ちえさん。これからのご活躍が楽しみです。
さて、10月27日、宮川町でも新しい舞妓さん・ふく兆さんの「お店だし」、29日には、J:COMチャンネル『恋舞妓の京都慕情』でも大人気、祗園甲部の杏佳さんの「襟かえ」が行われました。
襟かえとは、書いて字のごとく、「舞妓さんの紅い衿から、芸妓さんの白い衿へとかえる」という意味が含まれています。 他の花街ではそうでないところもありますが、祗園甲部の襟かえの挨拶回りは、男衆さんと共に行かれるのがしきたり。舞妓さんのお店だしの時と同じように、お茶屋や料亭など一軒ずつ回ってお披露目されます。
芸妓さんになると、『芸』で身を立てる『妓』と書くだけあって、芸にますます磨きをかけることが必要とされます。また、舞妓さんとの違いはお衣装や髪型だけではありません。芸妓さんは、若く美しくあることだけが求められるのではなく、洗練された会話、話題の豊富さ、しいては心のあり方まで…全体的な美を体現できてこそ成り立つお仕事。厳しい世界に見えますが、見方を変えれば、これほど女性にとって最高の職業はないのではないかと思います。日々、お仕事をする中で、どんどん自分をレベルアップさせていくことができるのですから…。 “芸妓さんになるための最初のステップ=舞妓さん”を夢見る若い女性たちが、後を絶たないというのも納得がいきますよね。梅ちえさん、ふく兆さん、杏佳さん、この度はおめでとうございます!
10月の簪
春を“桜”とするならば、秋の顔は“菊”。10月に舞妓さんが付けられるかんざしは主に菊をモチーフとしたものです。五十円玉の表にもデザインとして使われるなど、日本では長く愛され続けている花のひとつ。鎌倉時代には蒔絵や衣装の模様として流行したのだとか。
こちらは、祗園甲部舞妓の佳つ智さん。 つぼみを摘蕾しないスプレーマムに似た小さな菊の花々が、なんとも可憐。これから花開く年少の舞妓さんたちの未来を予感しているかのようです。
そして、宮川町舞妓のふく里さん。 お姉さん舞妓さんになると、このように大菊のかんざしを付けられます。左のこめかみあたりに挿された一番大きな菊にご注目ください。よくみると、ふく里さんのお顔の半分近くもあります…。シンプルながら、大胆不敵なデザインです。
10月の京都 ~ハイライトイベント~
● 20日(土)~11月25日(日)  二条城お城まつり  <<元離宮二条城>> ●20日(土)~11月25日(日)  午前9時~午後4時45分    京の老舗名産品展 <<二の丸御殿台所前>> ●20日(土)~11月11日(日)  午前8時45分~午後5時    菊花展  <<唐門前>> ●11月11日(日)  表彰式  <<唐門前>> ●10月28日(日)、11月1日(木)、11月3日(土)  午前9時30分~午後3時  第58回市民大茶会 <<清流園内和楽庵,香雲亭>>  裏千家,表千家,藪内家各流派による大茶会  茶席券2,500円(茶席2席,そば席,入城料含む) ●11月3日(土)、11月11日(日)  午前10時,午後1時30分  二条城建物めぐり  《東南隅櫓を含め,文化財建造物約10棟》 Photos:Copyright(c)2012 Maiko Club All Rights Reserved Special Thanks to: WALKKYOTO(一部画像提供)http://walkkyoto.exblog.jp/i30/
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