月刊・京の舞妓さん 11月号【1】

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伝統×新企画の融合!ストーリー性に富む華麗なる舞、祇園をどり

フィナーレ

フィナーレにて 祇園東舞妓の皆さん

 

祗園甲部、宮川町、先斗町、上七軒。先月、秋のおどりで大いに賑わいをみせた各花街。まもなく訪れるこの冬場、特に大きなおどりの発表会はないのですが、年明けて3月も末ごろになると、北野をどりを皮切りに、都をどり、京おどり、鴨川をどり、…と、春のおどりが続々開催されます。

 

そして、6月中頃には、合同伝統芸能特別公演『都の賑わい』が!フィナーレでは五花街の舞妓さんが勢ぞろいの、目もあやな大舞台が控えています。

 

すでに待ち遠しい気分…と胸躍らずにはいられないといいたいところなのですが、実は、京の秋には欠かすことのできない舞のお披露目がもうひとつあるのです。近年、11月初旬に京都を訪れたことのある方なら、八坂神社のすぐそばにある祇園会館にどっと詰めかける人の群れを見かけたこともあるのでは?

 

そう、「祇園をどり」です。こちらは祇園東の芸舞妓さんたちによる伎芸の発表会なのですが、他四つの花街が春に行うのに対し、ここだけは秋に披露されるのがならわしです。

 

一景_満彩代_美晴

第一景『蝶と扇の連舞の場』 芸妓・満彩代さんと美晴さん

二景_つね和

第二景『四国名所めぐりの場』 芸妓・つね和さん

 

祇園会館は、元々、映画館として使われていた劇場で、昔ながらのレトロなスタイルで人気を博した名画座でもありました。二本立て映画の上映、途中入退場自由、さらに飲食物の持ち込み自由など、今ではほとんどみられなくなった昭和の娯楽を空間ごと楽しめる稀な場所。

しかし、時代の流れなのでしょうか、映画の上映は惜しくも今年の3月30日をもって終了。祇園をどりの開催期間中はお休みとなりますが、現在は、よしもと祇園花月の公演の場として主に使われています。

 

今年で五十五回めとなる祇園をどり。日本舞踏の中でも花柳流に次ぐ大形流派の藤間流を採用した
伝統的な舞に、新企画を融合させるというユニークな構成に年々人気は高まる一方です。

 

今回は、『座戯遊興種(ざにたわむるゆうきょうのくさわい)』がテーマ。

全体で第五景に分かれており、第一景から第三景までは、“投扇興(とうせんきょう)”“とらとら”などのお座敷遊びを紹介したあと、その遊びにまつわる踊りをさらに披露するという流れになっていて、たとえば、お座敷に上がるお客役の芸妓さんと芸舞妓さんが金毘羅船々(こんぴらふ
ねふね)に興じる姿を短く演じたら、その後、四国を巡礼する旅女に扮する芸妓さんが登場し、遊びに関係する唄と舞を披露する…というまさに、めくるめくような舞台絵巻が繰り広げられます。

 

舞の素晴らしさだけでなく、演目にストーリー性があるのが祇園東ならではの手腕、祇園をどりの
見どころ!!

 

一景_つね有_満彩美

祇園東芸妓のつね有さん(左)と満彩美さん

 

美妓として熱狂的なファンの多いつね有さん、この人の右に出る者はいないのではというほど今回も色気ある男役をみごとに演じられた満彩美さんをはじめ、芸妓さんの醸し出す貫禄にはただ、ただ圧倒されるのみ…。言葉を失ってしまうほどの美しい気迫と、温情あるおおらかさが共存していました。叶果(かのか)さん、叶祐美(かのゆみ)さん、涼香(りょうか)さん、叶笑(かのえみ)さん、富多愛(とみたえ)さん、富久春(ふくはる)さんら、少数気鋭6名の祇園東舞妓さんたちが一所に寄り合うお姿は、赤や黄色に色づく紅葉のごとく、艶やかに光り輝くばかり…。

 

見惚れるうちにも刻一刻と時は過ぎてゆき、あれよあれよという間に第五景。フィナーレでは毎年恒例、芸舞妓さん全員による「祇園東小唄」が披露されました。『花の円山 石だたみ  桜吹雪に 舞衣 、姿やさしき だらりの帯よ 祇園東の 祇園東の 灯がゆれる…』と花街・祇園東の名所と共に、移ろいゆく季節を見事に歌い上げ、舞われた十日間。盛況裡(せいきょうり)に終演を迎えました。

 

 

ちょっと小話 その1 <<花街・祇園東の伝説!?>>

新旧さまざまなビルの立ち並ぶ祇園東には、「観亀(かんき)さん」の名で古くより親しまれている氏神様の観亀(かんき)稲荷社があります。ぼんやり歩いていると見過ごしてしまいそうになるほど、その佇まいはひっそりと静かな趣…。

 

しかし、この神社の創建はなんと1718年。元を辿れば、御所の火の番をする近江国大津周辺(現在の滋賀県大津市)の膳所藩(ぜぜはん)の京屋敷跡地だったのだそう。“火伏せの神”こと秋葉権現(あきはごんげん)を滋賀県の茶臼山に勧請した際に、分霊を祀ったといわれており、以来、同地区の防災や守護繁栄の神様として親しまれています。

 

三景_まりこ_雛菊_つね桃

第三景『千里が竹の場』 芸妓のまりこさん、雛菊さん、つね桃さん

 

この社の神徳ゆえのことなのか…歴史上、どの花街も幾度となく火災に見舞われてきましたが、祇園東だけは現在にわたり不思議と免れてきたのです。

 

二年ほど前に大鳥居を新たに建て直してから、ますます盛況をみせている「大祭」のほか、毎年行われる「ニの午祭」と「お火焚祭」では、祇園東の芸舞妓さんとお茶屋さん一同が集まられ、地元の方たちとともに、参拝・祈願されます。これからもどうぞ、この花街の人々が平穏無事に過ごされ、さらなる繁栄・発展に恵まれますように…。

 

 

ちょっと小話 その2 <<祇園をどりはなぜ、“おどり”ではなく“をどり”!?>>

「おどり」「をどり」。この違いは一体何なのか、不思議に感じたことはありませんか?

諸説はさまざまにあるようですが、一説では、伝統を受け継ぎながら、花街の踊りを継承していくという意味合いで、多くの花街が、旧かなづかいから現代かなづかいに移行する際、名称として、「をどり」という表記を残したといわれているのだそうです。

 

祇園をどりの他にも、現在も“をどり”と表記するのは、「都をどり」「北野をどり」「鴨川をどり」がありますが、宮川町の芸舞妓さんたちによる「京おどり」だけは、“おどり”と書かれていますよね?

 

これ、実は、宮川町という街自体が、お芝居や芝居小屋との縁に支えられ、深め合い、そして繁栄してきたことに関係しているのだそう。伝統を守り、受け継ぎながらも同時に、花街のひとつである宮川町に少しでも多くの人々に親しんでもらいたいという想いが込められて、“おどり”と書かれるようになったという説があります。

 

茶席_叶笑_涼香

お茶席での叶笑(かのえみ)さん(左)と涼香さん

 

ちなみに、同花街で行われる秋のおどりは“みづゑ会”と表記されますが、“京都えびす神社”を“京都ゑびす神社”とするように、「え」の代わりに「ゑ」を使うことで、先に述べたように、伝統をより重んじる形をとっています。それゆえ、春の踊りの会には、「を」でなく、「お」が付けられたという一説もあるのだとか。もしこの説を例にとるならば、先人の築いてきた伝統と、現代に生きる花街の人々が拓いていく新たな歴史…。双方の間で微妙なバランスを取りながらも、少しずつ進化していく花街の奥ゆかしさを愛おしく思わずにはいられません。

 

写真提供・協力:祇園東歌舞会 http://www.gionhigashi.com/

 

 

11月の簪(かんざし)

もみじ かんざし 市知さん2

横顔のきれいな人は本当の“べっぴん”さんといわれる所以に納得…

もみじ かんざし さと華さん

上七軒舞妓のさと華さん。秋艶!

お花のモチーフが多い舞妓さんの簪ですが、11月はその中でもひと際目立つ“もみじ”の葉をあしらったものを付けられます。

左は、上七軒舞妓の市知(いちとも)さん。黄金色の星屑を散りばめたような小さなもみじたちが、黒髪をよりいっそう美しく魅せています。

 

元々、かんざしは「髪挿し」に由来するといわれていますが、このお写真では挿しているというよりもはやなくてはならないお体の一部として市知さんと同化しているような、そんな不思議な存在感を放っているようにもみえませんか!?

 

一方、さと華さんのかんざしは、大ぶりのもみじの葉が三つ。

 

淡紫色がベースのお着物に、黄色がぱりっと映えていますよね。葉の縁にちょんと入った橙も効いています。これはまったくの偶然なのですが、背景の白みを帯びた檸檬色、舞扇とだらりの帯の金色もこの一枚に収められたすべてがまるで、紅葉の季節特有のきらびやかさ、日本の秋を演出しているかのよう…。

 

比較的落ち着いたトーンのお召し物、装飾品の中にもたくさんの色をみつけることができる。舞妓さんの装いを眺めることにはこのような楽しみ方もあるのです。

11月の京都

●15日(木)           龍馬祭   《京都霊山護国神社》

●23日(金)           もみじ祭り  《地主神社》

●24日(土)~26日(月)      献菓展   《平安神宮》

●26日(月)           南座まねきあげ 《南座》

●26日(月)           御茶壺奉献祭  《北野天満宮》

 

 

 

 

 




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